契約妻ですが、とろとろに愛されてます
******


琉聖さんが突然、キッチンカウンター向こうのリビングに現れて驚いた。キッチンで水を出していたせいで、玄関の音が聞こえなかった。


「りゅ、琉聖さん びっくりした……お迎えできなくてごめんなさい」


「ただいま」


琉聖さんは私の驚いた顔を楽しんでいるかのように口元を緩ませる。そうしてキッチンで突っ立っている私の元に来て、唇の端にキスをする。


「お、お帰りなさい お仕事は……?お時間が早くないですか?まだ四時過ぎですよね?」


ぎゅっと抱き込まれて身動きが出来なくなる。琉聖さんがいつもつけているフレグランスの香りが漂う。


夕方なのに、まだこんなに爽やかだなんて本当に仕事をしてきたのか?と思ってしまう。


「仕事はしてきたさ」


「りゅ――」


琉聖さんはしっとりと唇を重ねてきた。口唇を啄ばむようなキスをされると昨晩の熱がよみがえり、身体が痺れていくよう。キスを返すと、舌が差し入れられ私の舌が絡め取られる。立っていられないくらいキスを受けて琉聖さんが唇を離した時にはガクンとくず折れそうになった。


「もう……いきなりそんなキスしないで……」


笑う琉聖さんは身を屈めて額に唇を落とす。


「副社長さんがこんなに早くて良いのですか?」


「この時間に帰る為に昼食時間も削って仕事をしたんだ 褒めてくれるだろう?」


「琉聖さん……」


早く帰る為に努力してくれたんだ……。


私は笑みを浮かべ、コクッと頷いた。


「着替えてくるよ」


琉聖さんはネクタイを緩めながら着替えに行った。

< 174 / 307 >

この作品をシェア

pagetop