契約妻ですが、とろとろに愛されてます
「で、どうなの?若奥様 こんな生活羨ましいけど」


私は返事に困った。「快適」と一言で済ますのは簡単だけれど……。


「柚葉?」


私の顔から笑みが消えたのを見て麻奈が首を傾げている。


「何かあったの?」


「何もない……けれど、何もしないのが苦痛で……」


こんなことを言うのはいけないと思っていても、私は心を許せる麻奈だからと、つい愚痴をこぼしてしまった。


「……真宮さんは柚葉の為を思って大事にしているんだね 私は安心したよ」


思いがけない麻奈の言葉に目を見張る。


「柚葉はひとりで頑張っちゃう方だから、歯止め役がいないとだめだよ 柚葉の身体を考えての制限なんだよ? 愛する人が病気になるのは辛いと思う。考えても見てよ 真宮さんが病気になったら柚葉だって同じことをするんじゃない?」


麻奈の言葉は身に染みた。玲子先生にあの時言われた言葉も思い出した。私は我が侭だった。完全に治ったと言われるまでは、無理は禁物……自分の考えが浅はかで、琉聖さんに申し訳なく思った。


「……うん 私が間違っていた、こんな悩みをしているなんてバカみたい」


「そうだよ!何もしない贅沢を満喫するべきだって」


私は大きく麻奈に頷くと、少し冷めてしまった紅茶をカップに淹れた。

< 179 / 307 >

この作品をシェア

pagetop