契約妻ですが、とろとろに愛されてます
カタッ……物音で俺は書類から顔を上げる。開いているドアに寄りかかるように柚葉が立っていた。


「ゆず おいで」


名前を呼ばれた柚葉が中へゆっくり入ってきた。机を挟んで俺の前に立つ。その場所に俺の片方の眉が上がる。


俺のすぐ側に来て欲しかったのだ。


「気分は?」


「大丈夫……です……」


やけに他人行儀だな。昼間のことが尾を引いているのだろう。俺は立ち上がると、柚葉の目の前に立つ。


柚葉は顔を上げて黙ったまま俺を仰ぎ見ている。


「どうしたんだ?もうベッドに入った方がいい」


俺の言葉に柚葉の瞳が揺れた。


「悪化させたくないだろう?」


その言葉にコクッと小さく頷き、俺から離れ寝室へ向かう。その後姿に俺は深いため息を漏らす。


お姫様の機嫌が悪いな……。
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