契約妻ですが、とろとろに愛されてます
電話の通話のボタンを押し、秘書課の者に書類を持って来るよう指示を出してから俺は柚葉に電話をかけた。


『はい』


「俺だ 大丈夫か?」


『……大丈夫です』


また他人行儀になったように感じられる。


『すまない あと数日は一緒にいてやれない』


その時、開いていたドアに秘書課の関口 美砂子が書類を持って姿を見せた。


「副社長、書――」


俺が電話中だと知ると黙って頭を下げた。


『柚葉?』


「お仕事して下さい……」


柚葉は俺の言葉を待たずに切ってしまった。すぐにもう一度かけようとした指が止まる。秘書が部屋にいるせいだ。


「お電話中に申し訳ございません 副社長」


秘書は電話中に声をかけてしまった非を詫びた。


「いや かまわない 書類は?」


抱えるように持っていた書類を渡される。


「丁度いい、その書類を整理してくれないか」


机の上に乱雑に書類が置かれている。秘書はにっこり笑って「かしこまりました」と言った。


< 201 / 307 >

この作品をシェア

pagetop