契約妻ですが、とろとろに愛されてます
「タクシーでございますね?」


コンシェルジェの男性が呼んでくれたタクシーに乗って玲子先生のいる大学病院へ向かった。


すぐに行けば良かった……。


病院は終わっている時間で、救急の入り口で降ろしてもらった。タクシーから降りた途端に眩暈に襲われる。


身体がふらつき、壁に腕をついて頭を下げていると、女性たちの賑やかな声が聞こえてきた。


顔を上げて見ると、病院の職員の出入り口に数人の女性がいる。


「あら?柚葉さん?」


声をかけてくれたのは、入院していた時の顔見知りの看護師さんだった。


「あ、あの診察を……」


「まあ!大変だわ!」


看護師さんは私の左の血に染まるハンカチを見て驚いた。私は入口に置かれてあったストレッチャーに乗せられる。


「すぐに処置するからね」


目を閉じていると、玲子先生が帰っていないか確認の声が聞こえてきた。

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