契約妻ですが、とろとろに愛されてます
病室で眠っている柚葉を見てすぐに起こして叱りたい衝動を抑えた。


なぜ 電話をくれなかったんだ。


頼らないのは俺のせいか?憤りを感じて無意識に握り拳を作っていた。そこへ足音が聞こえ振り返る。玲子が入口に姿を見せ俺に目配せした。


俺は玲子に近づいた。


「輸血をしているわ 指の傷は止まったから とりあえず様子をみます」


「わかった」


「何かあったの?柚葉さんは知らせないで欲しいって」


「いや、何もないが……俺のせいだろう」


「仕事だけではない気もするけれど?」


玲子は意味ありげに問いかけてくる。


「仕事だけではない?」


「ちゃんと柚葉さんと話すことね」


玲子は肩をすくめると、白衣のポケットに両手を入れて去って行った。


病室に戻ると、柚葉は目を覚ましていた。ドアが開く音にさっと見る。


「琉聖さん、お仕事……」


俺の姿を目にして柚葉の瞳が揺れる。


「なぜ知らせてくれなかった?」


静かに問いただす声は怒りを抑えている。


「……」


「ゆず?」


「もう大丈夫だから お仕事に戻ってください」


俺の質問を拒絶して、掛け布団をすっぽりかぶってしまった。

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