契約妻ですが、とろとろに愛されてます
病院の予約は午後二時から。タクシーで病院へ行き受付近くのロビーのソファで待っていた。


病院の中は暖房が効いていて、お気に入りのコートを脱いで座っていた。


「真宮さ~ん」


保険証が新しい苗字になり、真宮の実感が沸かない私は呼ばれたことに気づかなかった。


「真宮 柚葉さ~ん」


「は、はい!」


もう一度大きく呼ばれて慌てて立ち上がり、受付に急いでいく。新しい苗字になったのをすっかり忘れてた。


「すみません 真宮です」


受付の女性に言うと「五番にどうぞ」と言われた。


五番のドアをノックして入ると、玲子先生が白衣を着てイスに座って待っていた。


「こんにちは 玲子先生」


にっこり微笑むと玲子先生も微笑み返してくれた。


「調子が良さそうね?柚葉さん」


目の前にイスを指で示されて腰をかける。


「はい 眩暈もしないし、身体も軽い感じなんです」


「幸せそうだわね?真宮夫人」


「まだそんな実感は無いんです 今までと変らない生活で。さっき名前を呼ばれた時もわからないくらいで」


苦笑いを浮かべる私に玲子先生が「そのうち慣れるわよ」と言って立ち上がった。


「今日は血液検査をするわね」


待ち構えていたように看護師さんが注射器をのせたトレーを持ってきた。

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