契約妻ですが、とろとろに愛されてます
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私達が一緒にマンションのエントランスに姿を現すと連絡を受けていた桜木さんはうっすらと笑みを浮かべ出迎えてくれた。


「おはようございます 琉聖様、柚葉様」


琉聖さんは桜木さんに頷いただけでそっけない。それが普通なのだろうと考えながら、私はにっこり笑みを浮かべて「おはようございます」と言った。


私達が後部座席に座ると、桜木さんはドアを閉めて運転席へ回った。


琉聖さんの隣に座り、真宮のビルが見えてくると圧倒的な大きさに目を瞬かせる。


会社には二回しか来たことがない。一度目は琉聖さんと偽りの婚約を決めた時、二度目は病気が発覚した時。


改めて大きいなと感じたビル。


こんな会社の副社長って大変なんだろうな……お義父様は社長だよね……。私には考えられないほどとてつもない重責を背負っているんだなと、改めて思う。


「どうした?」


車はビルのエントランスに到着していて考え事をしていた私は琉聖さんの声で我に返った。


「な、なんでもないです」


琉聖さんはドアを押さえて私が出るのを待っている。車から降りると腕を軽く添えられて回転ドアに向かった。
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