契約妻ですが、とろとろに愛されてます
「お帰りなさい」


家に帰るとお姉ちゃんが浮かない顔をしていた。


「どうしたの?お姉ちゃん」


いつも明るい姉がこんな表情をしているのは両親の事故以来だ。


いつも頼りっぱなしの三歳年上のお姉ちゃんはしっかりして優しい。


「慎が……」


「慎がどうしたの?」


慎の名前がお姉ちゃんの口から出て心配になる。


「事故を起こして……」


「えっ!事故っ!?慎は無事なの?」


「慎は大丈夫 むち打ち程度だから だけど友達のお父さんの外車を電柱にぶつけて壊してしまったの」


「壊したって、ひどいの?」


お姉ちゃんに詰め寄った時、貧血を起こしかけたような眩暈に襲われた。


「廃車ですって 電柱に右の前から後ろのドアまで擦って 新車だったのよ」


「……保険は?」


「その日納車の新車だから。まだ保険を掛けていなかったって」


「なんてこと……」


私は茫然となった。


「車の金額を含めた賠償金1500万円払えって」


「1500万!」


手にしていたバッグが手から落ちる。


「うちにはそんなお金ないから……」


お姉ちゃんが深くため息を吐き途方にくれている。


「慎は?」


「先方に行っているわ」


「お金を払わないと慎は刑務所に入ることになる……の?」


私の問いにお姉ちゃんが力なく首を横に振る。


「わからないわ……でも払わなければ訴えるって……」


1500万は今の私達にとって無理な額だ そんなお金すぐにはポンと出てこない……。

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