契約妻ですが、とろとろに愛されてます
確かに疲れてはいる。眩暈は起こらないけれど、身体は怠い。


連れて行かれた先は琉聖さんが大学まで使っていた部屋。広い部屋でがらんとした印象だけど、ダブルベッドサイズのベッドが置かれていた。


「座って」


ベッドに腰をかけ、ドレスを手で撫でつけていると、私の隣に琉聖さんが座った。


「キレイだって今日はもう言ったかな?」


不思議な色の瞳が優しく私を見つめる。その瞳に心臓がトクンと鳴った。


「まだ……」


そう言うのが精一杯で、何を言おうか戸惑っていると、琉聖さんは唇を重ねた。


「ん……っ……」


「キレイだ……出席者の男達は全員君にキスをしたかっただろう」


口唇を触れ合せたまま吐息のような囁き、上唇を食むキスをされる。


「琉聖さんだって女の人たちの目がハート型に――んっ……」


私の言葉は最後まで言わせてくれず、舌を絡ませてくる。


「君を休ませに来たのにダメだな……三〇分くらい横になってから帰ろう」


「そんな……大丈夫だから戻ろう?まだパーティーを楽しみたいの」


「……いや、少し休んだ方がいい」


琉聖さんは頑として譲らなかった。


私をベッドに横にさせると、自分もタキシードが皺になるのもかまわずに隣に横になってくれた。


「タキシードが皺になっちゃう……」


「あとは帰るだけだから構わないさ」


なら、今帰ろう……そう言いたかったけれど、横になると眠気が呼びさまされ、自然と目が閉じてしまった。


琉聖さんが起こしてくれたのは一時間後だった。まだイブだけど、あと一時間ほど経てばクリスマス。


少し眠ったおかげで怠さが少し取れた気がする。琉聖さんの部屋のドアが開くと、まだ賑やかな声が聞こえてくる。


パーティーがお開きになるのは真夜中の一時頃だと言う。


私はパウダールームに行かせてもらい、お化粧を軽く直した。ドレスは皺になりにくい素材だったせいで、乱れはなかった。


手を洗っていると、腕の内側がオーガンジー素材の布地を通して色が変わっているのが見えた。急いで袖をめくってみると、痣になっていた。


「!」


反対の腕の柔らかい所にも痣が見つかる。
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