契約妻ですが、とろとろに愛されてます
目を覚ました私は頭を動かして琉聖さんの姿を探した。


琉聖さんは私に背を向けて窓辺に立ち外を眺めていた。考え事をしているようで微動だにせず、声をかけるのは躊躇われる。


不意に背中を見続けるのが怖くなり声を出していた。


「琉聖さん……」


私の声に琉聖さんが振り向く。


「ゆず、気分は!?」


「大丈夫です、それより……ごめんなさい……心配かけちゃった……」


久しぶりに頭がハッキリしている。


「そう思うのなら元気になるんだ」


私の額にかかった髪を琉聖さんは優しく払ってくれる。


「……うん 絶対に元気になるから」


今日は昨日より身体が動かせて身体が楽だ。


琉聖さんの背後で白いものが落ちるのが目に入る。


「雪」


窓の外にちらつく白い雪を見てハッとした。


「ああ、寒いと思ったら雪が降っていたよ 明け方から降り出したようだ もう地面を真っ白にさせている」


「今日は何日……?」


「大晦日だ」


「そんなに……」


倒れたのはクリスマスだった……。


クリスマス……!


ハッとして身体がビクッと動く。


「オーストラリア……」


そうだ……倒れなければオーストラリアに行っていた。


そう思うと悲しくなり瞳が潤むのを止められない。


「旅行はいつでも行ける 治ったら行こう」


目尻から伝わる涙を琉聖さんは拭い微笑んでくれる。


「うん……連れて行ってね……」


少し話をしただけなのに、疲れて眠くなる。自然と落ちてくる瞼。


眠りたくない……。


「ゆず、もう一度眠るんだ」


無理に瞼を開けようとしているのがわかったのか、琉聖さんはそう言って手を握り優しい眼差しを向けてくれた。

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