契約妻ですが、とろとろに愛されてます
二人分の紅茶セットを持って来ると私の隣に座った。


慣れた手つきで琉聖さんはカップに紅茶を注ぐと私の手に持たせる。


「熱いからもう少し経ってからしようか?」


カップを受け取ろうと手が伸びてくる。


「一口飲んでから……」


ほんの少しだけ飲むとアールグレイの良い香りが口の中に広がった。


「……美味しい」


琉聖さんは私の手からカップを受け取るとテーブルの上のソーサーに置く。


「これから三人の看護師が来る 彼女達に交代で君の世話をしてもらう手はずだから 少しでもおかしいと思ったら彼女たちに言うんだよ?」



「琉聖さん、ごめんなさい 我が侭ばかり言って……」


家に帰りたいなどと言わなければこんなに面倒にならずに済んだ。


「もう謝らないでくれ 約束してくれるね?本当に少しでもおかしいと思ったら隠さないで欲しい」


「はい」


返事をすると、琉聖さんの肩に頭をそっと乗せると、腕が伸びてきて肩を抱き寄せられた。


しばらく二人だけの時間を無言で過ごしていると、私は眠気に逆らえなくなった。


******


それから数日間は血圧も脈も全てが安定していた。


二人の看護師は交代制。


毎日朝九時に来て午後三時に帰る看護師さんと、午後三時から夜の九時に帰る看護師さん、そして一晩一緒に居てくれる看護師さんに分かれている。


佳代子さんも毎日通って来て、みんなの食事を作ってくれる。


マンションに戻っても病院と同じ生活だった。


つねにベッドの上。病状は安定はしているものの、やはり体調がすぐれず、起きていられないのだ。


食事と忙しい琉聖さんが姿を見せる時だけ、ベッドの上に身体を起こす。


マンションにいれば琉聖さんに多くの時間会える。


病院にいた時よりはるかに幸せだと私は感じていた。


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