契約妻ですが、とろとろに愛されてます
琉聖Side


日に日に弱っていく柚葉を見るのは辛かった。


出会った頃の柚葉を何度となく思い返す。あの頃に戻りたいと何度願っただろう。


君が俺の元からいなくなる……そう思うとやりきれなく仕事にも身が入らなくなった。


常に柚葉の側にいてやりたい。


痛みを自分が背負ってやりたい。


俺は海外のあらゆるネットワークを使い、世界各国の骨髄バンクに協力を要請していた。


玲子も多方面から探している。


しかし柚葉の弱っていく速度が早いのだ。


玲子に柚葉の命はあと三ヶ月持たないかもしれないと宣告された。


その夜……俺は酒に逃げた。


修二は俺のやりきれない思いを受け止め、酒に付き合ってくれた。


酔うのがまれな俺だが、この夜記憶がなくなるまで飲んだ。


水を飲むみたいに酒を飲む。最初のうちは飲んでも飲んでも酔えなかった。修二が飲むなと何度も止めたがやめられなかった。


俺は酒を飲み、柚葉の死の宣告を忘れたかった。



翌日、酷い頭痛と吐き気で目が覚めた。


頭は今まで感じたことがないほどの痛み、胃の中は毒でも飲んだかのように気持ち悪い。


こんな酷い目に合ったことがない俺はふと柚葉は毎日こんな目に合っているのかと考えた。


ゆず……。


無性に会いたくなる。


昨日は病室に行かずに悪かったと後悔した。ショックが大きく柚葉の顔を正面から見られるか自信がなかったのだ。俺の表情で柚葉は悟ってしまうかもしれない。そう思うと病室へ行けなかった。


ふらつく足でリビングルームに行くと、ソファで修二が眠っていた。


足音で目が覚めた修二は俺を見ても何も言わなかった。


「修二、迷惑かけたな、すまない……」


「大丈夫か?あんな姿、初めて見たよ」


「もう大丈夫だ、シャワーを浴びたら病院へ行く 修二もそっちのバスルームを使ってくれ」


指でバスルームの位置を示すと、俺はシャワーを浴びに行った。


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