契約妻ですが、とろとろに愛されてます

幸せに向って

骨髄移植の日が一週間後に決まった。


その間、柚葉は骨髄移植の為の治療を受ける。


大量の抗がん剤の投与や放射線照射で柚葉の骨髄の細胞組織を破壊する。


免疫が低下し、感染症などを引き起こさない為に無菌室で過ごすのだ。


それは今よりもずっと辛い思いをしなくてはならないだろう。


明日から辛い治療が始まる。


俺は夕食を頑張って食べようとする柚葉を見守っていた。


「今日はたくさん食べられたな?」


「うん、体力つけなくちゃ」


ふんわりと微笑む柚葉は先ほどまでの無気力に近い柚葉とは違っていた。


凛とした柚葉に目を細める。


柚葉は頑張ってくれる。


そう信じるしかない。


俺はトレーを片付け、柚葉が横になれるようにした。


廊下に出て近くの配膳台にトレーを置くと、病室に戻る。


柚葉はまだ眠っていなかった。


近づくと恥ずかしそうに久しぶりに頬を少し赤らめた柚葉が口を開いた。


「琉聖さん……一緒に寝てくれる?」


珍しいお願いだった。


明日からのしばらくひとりになる柚葉は心細いのだろう。


「もちろんだ 俺も柚葉を抱きながら眠りたい」


柚葉の身体を丁寧に少しだけ動かし、俺は隣に横になった。


点滴をしている柚葉の腕を避けて抱き寄せる。


「……心細いか?」


そう言う俺の顔を見る為に、柚葉は頭を動かし見つめてくる。

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