契約妻ですが、とろとろに愛されてます
私は皆に約束した。


必ず元気になると……。


これから始まる治療、そして私が拒絶反応を起こさないで済むのかわからない骨髄液が怖いけれど、頑張ろうと決めた。


愛する貴方の為に……。


治って貴方と幸せになりたい。


琉聖さんは無菌室の入口まで付き添ってくれた。


ずっと手を握ってもらって、勇気がもらえた気がした。


数日後に届けられる骨髄移植の為に頑張るんだ。


「琉聖さん、頑張るから 心配しないでね?」


「ああ、待っている」


私を元気付けるように力強く琉聖さんは言ってくれた。


笑みを浮かべて手を振った私は看護師さんに車イスを押されて中へ入った。


その日から私は私を苦しめていた病気と闘った。


どんなに吐き気が酷くても負けない心を持つように心がけた。







そして……


アメリカから骨髄液が到着したと玲子先生から教えられた。


もうすぐ……もうすぐ、私は元気になる……。


ならなければ……琉聖さんと約束したのだから……。





骨髄移植が始まった。


抗がん剤と放射能照射で苦しんでいた所への移植。


私の腕からゆっくりと別の人の骨髄液が入っていく。


ひどく気分が悪かった。



『頑張るのよ……柚葉……』


苦しみに耐えている中、亡くなった母の声が聞こえた。


もうダメかも……お父さん……お母さん……。


私は亡くなった父と母に語りかけた。


『大丈夫よ 耐えて、幸せになるのよ』


『お前なら出来るよ 柚葉……』


両親が励ましてくれた。


すぐ近くに二人が居てくれる気がした。


朦朧とした意識の中の夢かもしれないけれど、ふたりに会えて嬉しい。



待っていてくれる琉聖さんの為に頑張らなくては……。




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