契約妻ですが、とろとろに愛されてます
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家に入るとお姉ちゃんと慎がキッチンにいた。慎はちょうど冷蔵庫を閉めた所。昨日と一緒で浮かない顔をしている。そんな姿を見ると早くお金の心配はいらなくなったと言って肩の荷を降ろしてあげたくなる。


「お帰り、ゆず、食べてきた?」


流しに向かっていたお姉ちゃんが振り返る。


「食べてないんだけど、何かある?」


お姉ちゃんの横に立つと、手元を覗く。


「ミートソースのパスタ、作ったけど食べる?」


お姉ちゃんたちはすでに食べ終え、私の食べる量だけ残しておいてくれていた。


「食べる、着替えてくるね」


身体の芯が痛むせいで、ぎこちない歩き方を見られないようにキッチンを離れる。


二階の自分の部屋に入ると、タンスの引き出しを開けてキャミソールとショートパンツを取り出した。ブラウスを脱ぐと、胸の膨らみにいくつもの赤い跡を目にして固まる。


急いで鏡の前に立つと、うなじから胸にかけて赤い斑点があちこちにあった。


「こんなに……キャミは無理……」


琉聖さんが唇で触れた箇所を見ると、頬が熱くなる。


私、正気じゃないのかも……会って二回目の人としちゃうなんて……今までどの男性にも魅力を感じなくて、今までバージンを守ってきたのに……琉聖さんにキスされると何も考えられなくなる。


数時間前の淫らな出来事を思い出してしまい、大きく首を横に振り、タンスの引き出しを開けた私だった。


******


下に降りて、パスタを食べ始めた。居間のテーブルにはお姉ちゃんと慎が座りテレビを見ている。


すぐに婚約の話は言い出せなかった。


切り出すのが難しいな……。


ミートソースのパスタを食べ終わり、どう切り出そうか悩んでいると、ふたりが見ていた刑事ドラマのエンドロールが終わり、コマーシャルになった。その時を狙って私は思い切って婚約の話を切り出した。






「ゴホッ、ゴホ、い、今なんて言ったの!?」


お姉ちゃんが麦茶をむせながら聞き返す。


「ゆず姉、婚約って?」


慎もあ然としている。


今まで男性とお付き合いしていた話など聞いていなかったのだから当然驚くだろう。


「うん、今日プロポーズされたの」


なるべく幸せに見えるようににっこり微笑む。

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