契約妻ですが、とろとろに愛されてます
「誰にプロポーズされたのよ?ゆず、付き合ってる人いたの?」


お姉ちゃんが勘ぐるように聞いてくる。


「うん……実は少し前から……真宮 琉聖さんって人と」


私自身、彼をあまり知らないから深く聞かれたら困る。


「真宮ってゆず姉の会社の親会社の名前だよね?」


慎に聞かれて、なんで知っているのだろうと小首を傾げる。


「慎、どうして知っているの?」


「あ~ 俺、これでもこれから就活だからな 日本でも有数の大企業だし、ゆず姉の親会社だったから覚えていたんだよ」


「そっか……うん、真宮コーポレーションの副社長なの とても素敵な人だから、今度会ってね」


私はいろいろ聞かれないように心の中で祈る。


「ずいぶん急だわね 副社長って、もしかしてすごい年上?」


まだ信じられないお姉ちゃんはじっと私の顔色を見ている。


「二七歳だよ それでね……事故のこと相談したら1500万円貸してくれたの」


テーブルの下に隠していた紙袋を取り出すと、慎の目の前に置いた。


「何?これ?」


目の前に置かれた慎が紙袋を開けた。次の瞬間、覗くように中身を見たまま慎は固まったように動かない。


「どうしたの?慎」


お姉ちゃんが不思議そうに聞く。


慎は紙袋ごとお姉ちゃんの目の前に動かした。お姉ちゃんは不審そうに紙袋の中を覗いた。


「ちょっと……」


お札の束を見たお姉ちゃんが更に疑り深い目になってる。


「ゆず、おかしいわよ そんなにお金持ちの人がプロポーズって しかもこんな大金をポンと渡すなんて」


「お姉ちゃん……」


「なんか裏があるんじゃない?」


「そんなんじゃないよ 私達は愛し合ってるの。お金はあくまで貸してくれただけだから 慎が地道に返すんだよ?」


苦し紛れに出た言葉で、慎はなんとか納得してくれたみたい。なぜかと言うと、浮かない顔から一転、慎は嬉しそうな笑顔になったから。


「ああ、それはもちろん 助かるよ ゆず姉」


慎は素直に喜んでくれている。そう思うと、この契約も無駄ではなかったと思った。

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