契約妻ですが、とろとろに愛されてます
******


ヒンヤリとした指が頬に触れ、それから額に触れる感覚に私は目を覚ました。


「熱は下がったようだな」


琉聖さんの金色の瞳が私を見下ろすように見ている。


「……今、何時ですか?」


明るい日差しが窓から差し込んでいるから、まだ昼間のはずなんだけど……どうして琉聖さんはいるの?


「二時だ」


「……お仕事は?」


過密なスケジュールに追われているはずなのに……。


「ここでやることにした」


「そんな……」


「俺の心配は要らない」


「私、家に帰ります。琉聖さんは会社に行って下さい」


「動くのはまだ無理だ 顔色が悪い」


「だって……十分、迷惑かけてるし……」


「俺が良いと言っているんだ」


それでも仕事に影響があるのではないかと心配になって身体を起こした。


「柚葉、このまま帰したら余計に心配になるだろう?」


「琉聖さん……」


ほんわりと心が温かくなる。女の扱いがひどいと思っていたけれど、そうではないみたいに思える。


琉聖さんはサイドテーブルに置かれた小さな紙袋を私の膝の上に置いた。


「これは……?」


「携帯だ」


戸惑い紙袋を開けれないでいると、琉聖さんは紙袋から箱を取り出し開けた。琉聖さんに不似合いなベビーピンク色の携帯を手にして、それを私の手の中にそっと置いた。


「私に……?」


「携帯がないと不便だからな」


「必要ないですよ?」


「俺が必要なんだ 連絡が取りにくい それに今時は小学生だって持っているぞ?」

< 54 / 307 >

この作品をシェア

pagetop