契約妻ですが、とろとろに愛されてます
そう言われて私は頷いた。


今後、家や会社の電話では話しづらいこともあるかもしれない。


「わかりました お借りしますね」


艶やかなフォルムの可愛らしい携帯電話をそっと右手で撫でる。


「自由に使ってくれ 説明書はここに入っている」


「はい ありがとうございます」


お礼を言うと、琉聖さんは寝室から出て行った。


******


翌日の朝、ビジネススーツに着替えた琉聖さんが寝室に入ってきた。


私の身体を考えて、琉聖さんは客用の寝室で寝起きをしていた。私がそっちで寝ると言うと、ここのベッドの方が寝心地が良いからと、強引に寝かされる始末。


「大阪に出張なんだ 夜には戻るからここにいろよ 体調が戻っていたら自宅へ送るから」


「大丈夫です ひとりで帰れるから、気にしないでお仕事して来て下さい」


「いや、送って行く」


琉聖さんはベッドの端に腰をかけると強く言う。


「琉聖さん……」


顔が近づいて来て名前を呟いた瞬間、唇がふんわりと重なった。優しくて蕩けてしまいそうなキス。


「んっ……」


啄むようなキスを何度も落として、最後は甘い音をたてて唇が離れた。


「ゆっくりしていろよ 食事は届けさせるから」


キスの余韻に呆然と琉聖さんを見ていると、彼は口元に笑みを浮かべて出て行ってしまった。


どうしてそんなに優しいの?そんなに優しくされると……。


琉聖さんを考えると胸が締め付けられるように苦しくなる。

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