契約妻ですが、とろとろに愛されてます
琉聖さんの言葉を無視するわけではないけれど、その後が心配で翌日会社に行くことにした。だんだんと会社に近づくにつれて妙な緊張感に襲われる。何もなかったんだと言い聞かせて会社に入った。


更衣室にいた麻奈は私の顔を見ると、ホッと安堵の表情を浮かべた。


「ゆず!もう大丈夫なの?電話したかったけれど、家にかけたら真宮さんの所だって言われて……」


麻奈はすべて知っているよう。


「うん もう大丈夫だよ 電話、ありがとう」


麻奈によると、あの日の翌日、横瀬課長の机は無くなったという。そして本人は北海道の辺鄙な支店へ行かされたらしい。事件は私と親しい麻奈と佳美先輩にだけに説明された。


琉聖さんは何もかも手配済みで、新しい制服もロッカーに用意されていた。


******


朝は麻奈と話す時間がなくて、お昼休みに外のカフェに出てようやく話が出来た。


「ひどい目にあったね ったく信じられないよ あのエロ男!前からゆずに気があったみたいだったけどね」


麻奈が腹立たしげに言う。


「えっ?気があったみたいって?それに妻子持ちだよ?」


「ゆずぅ~ どんだけ男心に疎いんだか 仕事はゆずにばかり頼むし、飲み会の席でもいつの間にか隣に座っていたのを何度も見ているし」


麻奈が呆れたように大きく息を吐く。



「そうかな……簡単な仕事ばかりだったけれど……飲み会は……うん、考えたら横瀬課長と話をしていることが多かったかも……」


今までの新年会、忘年会を思い出してみると、そうだったかもしれない。


「簡単な仕事をさせたいに決まってるじゃない 好きな女には」


麻奈は口をへの字にさせて怒りをあらわにしている。

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