契約妻ですが、とろとろに愛されてます
「ゆず?起きてる?」


ベッドの端に腰をかけていると、お姉ちゃんが部屋を覗いた。


「今、起きた……」


「仕事に出かけて2来るわね 慎も試合でいないから」


慎はテニスの試合か……。


「うん 気をつけていってらっしゃい」


お姉ちゃんにベッドに座ったまま小さく手を振る。


「ゆずは出かけるの? 」


「ううん、出かけないから夕食作っておくね」


料理は嫌いなほうじゃない。


早くに両親が亡くなってから、お姉ちゃんが家事をやってくれているけど最近は三人で分担している。


慎に作らせた料理は食べられたものじゃないので、もっぱら掃除係りなんだけど。


「じゃあ、よろしくね 行って来ます」


お姉ちゃんを玄関で見送ろうと立ち上がった瞬間、脱力感に襲われて再びベッドに座る。


疲れているんだな……いろいろあったから……もう一度寝よう……。




それから夢も見ずにぐっすり眠ってしまったらしい。家の電話に起こされた。


「――もしもし……?」


『ゆず姉? 慎だけど』


「ん……」


『ゆず姉、寝てた?』


「ん……」


私の寝起きの悪さは姉弟で一番だと言われている。


「もう夕方だぜ?」


「えっ!」


驚いてベッドに飛び起きるともうじき五時だった。
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