契約妻ですが、とろとろに愛されてます
料理を作り終えた時、六畳近くある玄関のドアが開く音がした。キッチンを出ると、琉聖さんがリビングに入ってくる所だった。


「お帰りなさい」


タイミングが良いな、なんて思いながら、にっこり笑って出迎える。


「ただいま」


琉聖さんはネクタイを外しながら私に近づくと、いきなり引き寄せ唇が塞がれる。


「熱はないみたいだな」


「えっ?」


もしかして、キスで確かめたの?


「いい匂いだな」


「何が好きかわからなかったので和食にしてみました」


「楽しみだ 着替えてくるよ」


琉聖さんは寝室に消えた。後姿を見送って私はくすっと笑う。


新婚さんみたい……。


琉聖Side


白いサマーセーターと着古したジーンズに手早く着替える。


まだ顔色は良くなかったな。薄化粧しかしない柚葉の肌はいつも透き通るような白さなのだが。


熱を確かめたくて唇に触れていた。


仕事をしていても柚葉が気になり、この二日間集中できなかったな。俺は柚葉を愛し始めているのか?彼女が1500万を欲しがった理由がわからない。何か理由があったのか?女は高いものをねだる。今までの経験からそう考えていた。しかし、柚葉は買い物にも興味を示さず、買ってやった服にも見向きもしなかった。婚約指輪を買った時も戸惑っていた。どう考えても金にがめつい女には思えない。


別れた後、指輪を売れば良いと言った時の柚葉の顔は傷ついたように見えた。


わからない女だ……。
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