契約妻ですが、とろとろに愛されてます

心配

「おはよ~ ゆずぅ」


「おはよう」


廊下を歩いていると、後ろから麻奈の元気な声が聞こえ振り向いた。


「ゆずの今日の洋服、素敵じゃない?」


私の服装を上から下まで眺めている。


「ありがとう」


麻奈の褒め言葉ににっこり笑う。


「それに嬉しそうだね 何かあった?」


麻奈、鋭い……。


「そ、そうかなぁ……」


言葉を濁す。琉聖さんのマンションから出勤したって知ったら麻奈、驚くだろうし……反応が怖い……そんなことを思いながら更衣室に入った。


******


朝のウキウキした気分から一転、もうそろそろお昼休みになりそうな時、急に体調の悪さを感じ始めた。


なんだろう……気持ちが悪い……。


動悸がして息が荒くなる。手を口元を押さえ呼吸を整えようとするけれど、あまりの気分の悪さにイスからずるずると落ちそうになってしまう。


「柚葉!あんた気分悪いの!?顔が蒼白になってるよ?」


私の様子に気づいた麻奈が驚いて支えてくれる。


「麻奈……ちょっと気分が……」


「トイレ行く?それとも休憩室?」


「少し横になれば大丈夫……」


部屋の中にいた社員たちも心配そうに寄って来た。


私は麻奈に抱えられるようにして休憩室へ行くとソファに寝かされた。


冷や汗が出て、額に手をやると粒上の汗が噴き出しているのがわかった。


「ひどい汗!柚葉、病院行こう」


私は顔を歪め、小さく首を振る。


「でも!辛そうだよ」


「大丈夫だから このまま寝かせて……動きたくないの……麻奈はお昼を食べてきてね……」


話すのも億劫で私は目を閉じた。


なぜだか病院へ行きたくなかった。動きたくなかったせいもあるが、病院へ行ったら幸せが逃げていく気がしたのだ。頻繁に熱や具合が悪くなる自分が怖かった。


「わかった 少し休んでね また様子を見に来るから」


麻奈はタオルケットを身体にかけてくれると出て行った。

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