契約妻ですが、とろとろに愛されてます
琉聖Side


イスの背に背中を預け、天井を仰ぐ形で考え事をしているとドアがノックがされ、風呂上がりの柚葉が顔をのぞかせた。


「お風呂、お先にいただきました」


きちんとお礼を言う柚葉が好ましい。厳しく育てられたのだろう。時々、堅苦しいと思うほど他人行儀になる。


「ああ 髪が濡れているじゃないか、ちゃんと乾かさないと風邪を引く」


「あ、はい 乾かしてきますねっ」


柚葉は俺に指摘されて、髪が濡れているのに気が付いたようだ。パタパタとスリッパの音をたててドアからいなくなった。


その姿が可愛らしくて俺は声を出して笑っていた。


******



髪をドライヤーで乾かしてから書斎へ行くと、琉聖さんはまだ仕事をしていた。


書斎のドアは開けっ放しにしてあったから、ドアに立つ私に気づいていないみたい。


この機会に私はじっくり琉聖さんの横顔を見ていた。琉聖さんはパソコンに向かって難しい顔をしていた。


「早くベッドに入れよ」


琉聖さんはパソコンから私の方へ顔を向けて言った。


「え……」


気づかれていた!


「もう少しかかるから先に寝てていい」


「はい おやすみなさい」


まだ終わらないんだ……私の為に無理をして仕事を切り上げたのかも……邪魔はしたくない。


私は頭を下げると書斎のドアをそっと閉めた。


寝室のベッドに座り時計を見ると、時刻はまだ一〇時を回ったばかり。


早く寝ろって……いくらなんでも早いよね?琉聖さん、完全に子ども扱いしてる?


昼間休憩室で眠ってしまったし、琉聖さんのマンションで少し落ち着かない。こんな時間に眠れないと思いながら清潔なシーツに横たわる。


眠れない……そう思っていたのに、思ったより体が疲れていたのだろう。頭を枕につけると考える間もなく眠りに落ちていた。

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