契約妻ですが、とろとろに愛されてます
「真宮様、お待たせいたしました」


「ほう……」


さっきから微妙な色合いに変わる瞳で見つめられて私の心臓が急激に乱れ始める。


「どうしてこんな高価なワンピースを着せるんですか?」


「あのままでは風邪を引いてしまうし、付き合ってもらいたいところがある」


「私、帰りたいんです……」


彼が気になるけれど、どんどん考えが及ばないところまできている。


ポンと、高級な服を買い与えようとする彼。このまま、この人といても良いのか……怖さも感じて言っていた。


「しっ……」


彼は私の唇に人差し指を置き、有無を言わさずに腕を掴むと店を出た。


そして再び車の後部座席に座らされる。


柚葉、しっかりしないと!これでは意志の弱いどこにでも付いて行く女だよ。


「やっぱり私……」


車から出ようとドアの取っ手を掴んだ時、車がゆっくり動き出した。


仕方なくドアから手を離し、深いため息を漏らすと真宮さんを見た。


彼は何を考えているのかわからない表情で私を見ていた。


「これから一緒に店で飲んでくれるだけでいい」


「たったそれだけなのにこんなに高価なワンピースを?」


「場合によっては芝居もあるかな」


「私、お芝居なんて出来ません」


私は驚いてふるふると大きく首を動かす。


「とにかく喉が渇いた。付き合ってくれないか」

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