契約妻ですが、とろとろに愛されてます
琉聖Side


菜々美が出て行くと俺は柚葉の携帯に電話をする。呼び出し音が鳴るだけで電話がつながらない。


クソッ!


乱暴に携帯電話をソファの上に放り投げる。


昨日のことがあり、冷たい態度を取ってしまった。大人げなかったと後悔している。


そこへ軽いノックの後、修二が入って来た。


「よっ!」


「お前か」


「お前かって、ひどい扱いだな ところで、誰かケガでもしたのか?」


「ケガ?」


俺は眉根を寄せた。


「廊下から血痕が続いているから」


修二が桜木の執務室に続くドア付近の血痕を指差す。そこへそのドアが開いた。


「琉聖様」


桜木が入って来た。


「なんだ?」


「柚葉様が検査した病院から電話が入っております」


「病院から?」


俺はなぜ病院から電話が自分の所に来るのか不審に思いながら、受話器をとった。


「真宮ですが?」


『琉聖さん?玲子です』


「玲子?君が柚葉の担当なのか?」


玲子は真宮家の主治医の娘で、柚葉が受けた大学病院に勤めていた。同い年で幼い頃から知っている女性だ。


『ええ 下山柚葉さんは琉聖さんの婚約者なんでしょう?おば様から名前を伺っていたし、予約が真宮だったから』


「そうだが?どうして俺にかけてきた?」


『柚葉さんの検査結果が三日前に出たの すぐに来院して欲しいと電話をしたけれど、まだ現れないから電話したのよ』


「……緊急なのか?」


嫌な予感がした。医師自らが電話をかけてくる。何かあったに決まっている。


『ええ すぐにでも治療を始めないと……』 


「いったい何の病気なんだ!?」


俺の目の前はかすみ、心臓が暴れはじめた。


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