契約妻ですが、とろとろに愛されてます
『柚葉さんは再生不良性貧血なの』


「再生不良性貧血?」


「ええ、聞いたことがあるかしら?この病気は血液中の白血球、赤血球、血小板のすべてが減少する病気なの」


俺の霞んでいた目の前が一瞬真っ暗になる。


「すぐに連れて行く」


俺は玲子に約束をすると受話器を元に戻した。


「琉聖?大丈夫か?どうしたんだ?」


修二が俺の様子を見て顔を覗き込む。


「血痕!」


琉聖は不安を覚えた。血痕は柚葉のものとしか考えられない。菜々美の投げたカップの破片がどこかを傷つけたのだ。


血小板の不足だとすれば自然に血を止められない。まだいまも出血をしているとすれば大変なことになる。


俺は部屋を飛び出すと血痕を頼りに走り出す。


血痕はエレベーター入り口まで続いていた。エレベーターのボタンを押し到着するのがもどかしい。やっと到着したエレベーターの中はやはり血が床に点々と付いている。


「血が出ていることに気づいていないのか?」


エレベーターに乗り込むと、修二も乗り込んできた。


「おい、説明してくれよ、この血は誰のなんだよ?」


「柚葉だ」


「柚葉ちゃんの血!?」


修二は驚いている。


「柚葉は血液の病気らしい すぐに見つけなければ」


その時、エレベーターが一階に到着した。降りてロビーに走ると、人だかりが見えた。


「救急車を呼べ」と言う声が聞こえてくる。


その声に俺は心臓が止まりそうになる。


「柚葉!?」


人をかきわけると、冷たい床に倒れた柚葉の姿があった。


「柚葉!」


駆け寄りぐったりとした身体を抱き起こし名前を呼ぶが反応がない。ポケットからハンカチを取り出し、足から血が流れ続けている傷口に当てる。そしてネクタイを外してぎゅっと患部を縛る。


修二が誰かに救急車を呼んだのか聞いているのが耳に入る。まだのようだ。


「修二!車出してくれ」


顔面蒼白の柚葉を抱き上げると修二に言う。


「わ、わかった エントランスにつける」


修二は走って地下駐車場に向かった。


車を待つ間、縛ったネクタイに血が滲み始める。血はまだ止まらない。


くそっ!止まってくれ!


琉聖は柚葉を抱いてエントランスに向い、丁度来た修二の車に乗り込むと病院へ向かった。

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