契約妻ですが、とろとろに愛されてます
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柚葉が集中治療室に入ってからかなりの時間が経った。


美紀さんと慎君が知らせを受けて飛んできた。皆は集中治療室の横の長イスに座り、中から主治医が出てくるのをひたすら待った。


「どうして気づいてあげられなかったのかしら……」


おろおろと美紀さんが嘆くように呟く。


「考えたら顔色が悪かったし、鼻血もよく出していたわ……腕にあざも出来てるのを見たし……」


呟いているうちに涙腺がゆるんだのだろう、美紀さんが泣き始めた。姉の肩を弟が肩を抱く。


その時、集中治療室の扉が開き、医師が出てきた。俺と電話で話した玲子だった。玲子は少し疲れた表情を見せていた。


「先生!」


美紀さんが立ち上がり、涙を拭きながら医師に近づく。俺も話を聞くために近づく。


「血小板の数値が低い為、なかなか出血が止まらず輸血をしました。心配はいりません 集中治療室は出られますが数日はつらいでしょう もう少し検査が必要です。詳しい話は私の部屋で」


玲子が説明するとそこにいる全員が安堵の表情を浮かべた。


「美紀さん、俺が詳しい話を聞きますから柚葉の所へ行ってあげて下さい」


俺が言うと美紀さんは真っ赤な目で頷いた。


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