**吸血鬼と暴走族**[完]


自嘲するかのように笑い、その場に膝を突き、両手で顔を覆う


別に泣くわけではない


ただ……、今はこうしていたいだけ


悲劇のヒロインぶるつもりも、自分が可哀想と思うつもりはない


でも、あんな別れ方だけは、したくなかった


……こんな世界に存在する価値なんか無い


何度そう思ったか


おぬしの居ぬこの世(夜)に我の瞳を何を写そう


おぬしの居ぬこの場で我は何を思おう


我はもう、お主(ぬし)抜きでは生きてはゆけぬと言うのに……


だが、お主最初で最後の願いだけは聞き入れたい


この願いを叶えている間だけでも、お主に会いたいと思う我は異常か……?


なぁ、最後にもう一度、お主の口からお主から貰った名を、呟いてくれ……


もう我は、この心が闇に染まりそうだ


この星のない夜空のように……







我は顔を覆う手を顔から離し、漆黒の夜空を見上げる


すると、頬にはあの時流した涙と同じ冷たさが頬をつたう…


静かに、涙は我が身を冷やす


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