ヤンキーガール×ヤンキーボーイ
その昔、そう、あたしが総長だったころ、この繁華街には「舞月(まいげつ)」と呼ばれる男がいた。
強すぎて、誰も勝てないから、舞うように人を倒すから。
夜の月が背中にあたって黒くなるから、「青蘭の舞月」とも言われた。
舞月はもうひとつの顔があった。
情報屋として、≪Black cat≫という店に通う。
同じ情報屋や、提供者が集まるバーなんだけどね。
……まぁ言っちゃうとそれが男装したあたしのかつての通り名だった。
神皇を裏切った者の居場所は、そこに通ってわかったことだった。
いまから久しぶりに行こうかな。
で、頼んで寝かせてもらおう。
「……チッ」
フラフラと<Black cat>に向かうあたしを誰かが見ていたことには、気づかなかった。