オズと霧の浸食過程
「スケッチ、ねえ……それで毒霧にやられないって話だから気味が悪いよな」


「魔女だからよ…魔女だから……」


「ところでマーシー。そろそろ子どもが帰ってくる時間じゃないのかい?」


店主の言葉に、マーシーははたと我にかえる。


「え、あ、そうね!……じゃあそろそろおいとまするわ!またね、ランドールさん」


ひらりと手をふり、紙袋を掴むとマーシーは足早に店を出ていった。


マーシーを見送り、店主は店の中へ戻る。


「……そうだ……」


新しい月のカレンダーを眺め、店主は思いついたように、さっき破ったカレンダーを裏返してペンを取った。


そして、サラサラとカレンダーの裏にペンをすべらせていく。
ツンと鼻をつく匂いが店中に広がった。


「これで……よし!」



その紙には、日が沈む絵、再び登る絵、魔女の絵が書かれていた。


店主はその紙を丁寧に店先に貼る。


それは明日、オズが店に来ることを意味していた。



よく見れば、大通りにかかっている看板は全て数字と絵だけで構成されている。


ひとつ大きな欠伸をして、主人が店の中に戻った。



就業再開を告げる安っぽい鐘の音が高らかに高らかに響いた。




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