オズと霧の浸食過程
「あーあ。だからもうちょっと静かにしろって言ったろ?バレちゃったじゃんか」
オズの登場に少しばかり動揺していた少年だが、リーダー格らしい少年がそう声を張り上げたのを聞き、示し合わせたかのように笑って口々に言い始めた。
「ごめんってば。でも、俺けっこう潰したぜ。ほら見ろよ、このトマト」
ある少年が、岩に投げつけられて果肉ごと弾けとんだいくつものトマトの残骸を指差す。
オズが農作業の途中に少し座るにはちょうどよかった岩には、酸っぱい匂いのする赤い液体がベットリと染み付いていた。
「バーカ!トマトは得点低いって決めたじゃんか!」
得意そうに笑うもう一人の少年の足元には、まだ育ちきっていないトウモロコシが散乱していた。
オズが一から枝を切り出して作った農園用の柵がバラバラになって、ほっこりとした土に突き刺さっている。
「あら、食べ物を粗末にしちゃあいけないってママが言ってたわ。お花をこんなに集めたあたしの優勝よ」
四人の少年から少しだけ遠のくようにして眺めていた少女の手には、何本ものチューリップが花束のようにして抱えられていた。
無造作に手で千切りとっていったらしく、根を失ったチューリップははやくもしおれかけて首をもたげている。