オズと霧の浸食過程
セブンスダヴリュの村人は、オズを精神異常者扱いにした。


まだ乳児の頃、何者かによって村の入り口に捨てられていたオズは心優しい村人たちに迎え入れられ、子供に恵まれない夫婦の下に引き取られた。




当初は村人も夫婦も孤児のオズを大事に育てたものの、オズを取り巻く皆の顔色が変わったのは、もう間も無くのことだった。



好奇心旺盛なオズはある日、村長の家の奥に隠されていた書庫にしまわれていた本を見つけて読んでしまったのだ。




本は読むためにある。それは誰もが理解している。
けれど、セブンスダヴリュの村にとってそれは“理解できない”ことだった。



そのときのオズは、教わってもいない自分が文字を読めることに何の疑問も感じていなかった。




一度読み始めると、もう止まらなかった。





(すごい、これは物語なんだ!)
(面白いな、不思議だな)





そのまま一冊の本を読破してしまったオズを見て、村長は青ざめた。




先々代のセブンスダヴリュの村人たちは、文字を嫌った。



文字という文化を追放するまでに、どのようないきさつがあったのかは今となっては分からない。



今の村長の代では、そのミミズののたうちまわっているような記号に“文字”という名前がついていたことすら誰も知らない。






ただ一人、オズを除いては。


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