異国で咲く花
2日後、蒜名と一緒にいちこは中崎道場を訪れ、中崎に悪夢はまだ見えるか質問した。
「いやぁ、おかげさまであの夢は出て来なくなりました。
退治屋とは噂通りの強者ぞろいだ。
それと、蒜名くんといったか?」
「はい。」
「もしよかったら、これからうちの弟子たちと私と手合せしていってくれんかな?
実際に、刀が言っていた日緒名殿の技を見てみたいのだ。
君のように実戦経験豊富な剣士にとっては遊び以下にも思えるかもしれんヤツもいるが、そこを何とか・・・これも経験。
なんとか手合せしていただきたいのだが・・・。」
「蒜名さん・・・体の調子がよくなかったら無理しないでくださいね。」
「ああ。体はもう問題ないし、そうだな・・・ならしにちょうどいいかもな。
わかりました。稽古場におじゃまします。」
「そうか、やってくれるか。ありがとう・・・すぐに準備にかかるとしよう。」
中崎道場の門下の弟子たちは、試合主体の剣術しかしたことはないにしても、蒜名に臆することなく、どんどん勢いよく向かっていった。
そして、蒜名もまたそんな弟子たちに失礼のないように大怪我だけには気をつけ、バッタバッタと薙ぎ払うように倒していった。
「ふう・・・さすがですな。
技そのものには加減もなく、皆いい体験ができたと喜んでいるよ。」
「いえ、中崎殿の教えが行き届いておられたので、私も思い切った動きができました。」
「では、このあとちょっとした宴でもやりましょうか。
皆が喜びますし。」
「あの、大変申し訳ないのですが、私はまだ療養中の身ですし、退治屋の仕事が舞い込むかもしれませんので、宴はまたの機会ということでお願いしたいのですが。」
「そうでしたか・・・そりゃこちらも配慮がなかったですな。
では、次回には万全の状態のときにということで。」
「はい、ぜひ。ではそろそろお暇いたします。」
蒜名といちこは中崎道場を後にして、退治屋の事務所へと歩き始めた。
すると、途中で蒜名は退治屋とは違う道へと入っていった。
「蒜名さん、事務所へもどるんじゃないんですか?」
「ああ、ちょっとだけつきあってくれないか?
この先の神社に寄って行きたくてな。」
「神社ですか?」
たどり着いたところは、日緒神社というこじんまりした神社だった。
「ひお???」
「我が師匠はここに祀られているんだ。
彼は、もともとは宮司だった。
日緒名の剣は神から与えられたもの。
だから、神社の境内で子どもの面倒を見るのが好きだった。」
「そうだったんですか・・・日緒名さんは人を斬ることを仕事にはしておられなかったんですね。」
「だが、俺は・・・」
「蒜名さんだって、人を守るために戦っておられるじゃないですか。」
「えっ・・・!」
「剣士が人を助けるために、剣をふるうのは当たり前でしょう?
人を斬りたいから、退治屋してるわけじゃないですよね。」
「ああ。」
「私ね、こっそり七杜さんにきいちゃったんですよ。
蒜名さんの剣ってとても長いのは七杜さんに張りあってるんですか?って。
そしたら、蒜名さんの剣が長いのは人でないものを斬るからなんだって教えてもらいました。
人間を斬るためのものじゃないって、わかりやすいです。
それに、長い剣をかまえているときの蒜名さんは剣に負けることなく、いつもよりももっともっと大きく見えます。強そうです!」
いちこが日緒神社の本堂前でそう言うと、蒜名はぐっといちこの二の腕をひっぱって裏手へとまわり、いちこを壁に押し付けたままキスをした。
「あっ・・・う・・・あん・・。」
「聖智や七杜が好きか?それとも高千と付き合っているのか?」
いちこの両腕を力強く掴む蒜名の手が両腕から離れ、今度はいちこを包み込むように抱きしめていた。
「高千さんとは甘党の店にときどき連れていってもらっています。
聖智さんは、リズのキスの魔力のせいで、私が襲ってしまったんです。
七杜さんは私が呪いの鬼の姿を見ても平気だったから、うれしいってよろこんでくれて・・・。」
「お、俺の女にしたいと言ったら?」
「困ります!・・・私はこの世界の人間じゃありません。
突然、ここから消えちゃうかもしれないし・・・そういう約束は無理です。
ごめんなさい。」
「いやぁ、おかげさまであの夢は出て来なくなりました。
退治屋とは噂通りの強者ぞろいだ。
それと、蒜名くんといったか?」
「はい。」
「もしよかったら、これからうちの弟子たちと私と手合せしていってくれんかな?
実際に、刀が言っていた日緒名殿の技を見てみたいのだ。
君のように実戦経験豊富な剣士にとっては遊び以下にも思えるかもしれんヤツもいるが、そこを何とか・・・これも経験。
なんとか手合せしていただきたいのだが・・・。」
「蒜名さん・・・体の調子がよくなかったら無理しないでくださいね。」
「ああ。体はもう問題ないし、そうだな・・・ならしにちょうどいいかもな。
わかりました。稽古場におじゃまします。」
「そうか、やってくれるか。ありがとう・・・すぐに準備にかかるとしよう。」
中崎道場の門下の弟子たちは、試合主体の剣術しかしたことはないにしても、蒜名に臆することなく、どんどん勢いよく向かっていった。
そして、蒜名もまたそんな弟子たちに失礼のないように大怪我だけには気をつけ、バッタバッタと薙ぎ払うように倒していった。
「ふう・・・さすがですな。
技そのものには加減もなく、皆いい体験ができたと喜んでいるよ。」
「いえ、中崎殿の教えが行き届いておられたので、私も思い切った動きができました。」
「では、このあとちょっとした宴でもやりましょうか。
皆が喜びますし。」
「あの、大変申し訳ないのですが、私はまだ療養中の身ですし、退治屋の仕事が舞い込むかもしれませんので、宴はまたの機会ということでお願いしたいのですが。」
「そうでしたか・・・そりゃこちらも配慮がなかったですな。
では、次回には万全の状態のときにということで。」
「はい、ぜひ。ではそろそろお暇いたします。」
蒜名といちこは中崎道場を後にして、退治屋の事務所へと歩き始めた。
すると、途中で蒜名は退治屋とは違う道へと入っていった。
「蒜名さん、事務所へもどるんじゃないんですか?」
「ああ、ちょっとだけつきあってくれないか?
この先の神社に寄って行きたくてな。」
「神社ですか?」
たどり着いたところは、日緒神社というこじんまりした神社だった。
「ひお???」
「我が師匠はここに祀られているんだ。
彼は、もともとは宮司だった。
日緒名の剣は神から与えられたもの。
だから、神社の境内で子どもの面倒を見るのが好きだった。」
「そうだったんですか・・・日緒名さんは人を斬ることを仕事にはしておられなかったんですね。」
「だが、俺は・・・」
「蒜名さんだって、人を守るために戦っておられるじゃないですか。」
「えっ・・・!」
「剣士が人を助けるために、剣をふるうのは当たり前でしょう?
人を斬りたいから、退治屋してるわけじゃないですよね。」
「ああ。」
「私ね、こっそり七杜さんにきいちゃったんですよ。
蒜名さんの剣ってとても長いのは七杜さんに張りあってるんですか?って。
そしたら、蒜名さんの剣が長いのは人でないものを斬るからなんだって教えてもらいました。
人間を斬るためのものじゃないって、わかりやすいです。
それに、長い剣をかまえているときの蒜名さんは剣に負けることなく、いつもよりももっともっと大きく見えます。強そうです!」
いちこが日緒神社の本堂前でそう言うと、蒜名はぐっといちこの二の腕をひっぱって裏手へとまわり、いちこを壁に押し付けたままキスをした。
「あっ・・・う・・・あん・・。」
「聖智や七杜が好きか?それとも高千と付き合っているのか?」
いちこの両腕を力強く掴む蒜名の手が両腕から離れ、今度はいちこを包み込むように抱きしめていた。
「高千さんとは甘党の店にときどき連れていってもらっています。
聖智さんは、リズのキスの魔力のせいで、私が襲ってしまったんです。
七杜さんは私が呪いの鬼の姿を見ても平気だったから、うれしいってよろこんでくれて・・・。」
「お、俺の女にしたいと言ったら?」
「困ります!・・・私はこの世界の人間じゃありません。
突然、ここから消えちゃうかもしれないし・・・そういう約束は無理です。
ごめんなさい。」