異国で咲く花
魂を分かつ本
そこは静寂が続く空間・・・・・

リズナータは空気と化していた。


「俺はもう・・・そうか、形をすっかりなくしちまったんだな。

いちこどうしてるかなぁ。

いちこが生きてるのはわかる。

意識がいちこの心臓の音を感じてる。

でも、もう俺はいちこの中に存在できなくなっちまった。

この空間に閉じ込められたまま、また深くて長い眠りにつくだけなのかな。」



そうつぶやいてからまもなく、リズナータは眠りについた。



夢・・・?


小学生くらいの男の子がオルゴールを作っている。

俺って手先が器用だったな・・・。

うん、ラジオの修理の仕方もじいちゃんに教えてもらったら簡単にできてしまったもんな。


周りの友達が好きな女の子の話で大騒ぎになってるときも、俺は飛行機のラジコン作ったり、プラモデルをアレンジしたりして女なんて見向きもしなかった。

アレ?いったい俺は誰なんだ?


フィギュアを買ってくるなんてもったいない話。
そんなもの、俺が自力で作ってみせるさ・・・なんて誰に話したんだっけか?

話しかけて・・・それから・・・なぜ?

青い光が輝いて、まぶしくて・・・そして、わけのわからない場所に!


そして、俺は退治屋と書かれた看板の下に転がっていたんだ。


退治屋から出てきた男たちが俺をかついで、怪我の治療にあたってくれて、そして・・・俺は自分でできることが何かを必死で思い起こした。


作ること・・・。物を作ること。修理すること。

でも、ここは電気屋じゃないんだ。

退治屋として、やっていくしかない俺は・・・俺は・・・。


作ってはいけない武器を作ってしまった。

だが、ここでは罪にはならなかった。

前の世界でモデルガンを作りたいと願ったときもあった。

しかし、拳銃を作れば犯罪が寄ってくる。


だが、退治屋で俺がやっていくために、自分の身を守るために・・・


武器を作っていくしかなかった。

作ることはできても、俺は扱えるのか?

俺は戦えるのか?誰かを守れるのか?


誰かの盾になって守ってあげたい・・・。

その方が人間らしくていいんじゃないのか?

俺は戦いながらなど、守れない。

ましてや女なんて、守れるわけがないじゃないか。



俺はリズナータじゃない、祐希なのだから。




俺は・・・祐希なのか?じゃ、リズナータは誰だ?

リズナータは本に封印されていた悪魔だった。

そう、本を作る魔王の弟。

紫や青や赤・・・黄色、茶色・・・。

魔物が封印された悪魔の書物。


だめだ、そんなものをばらまいては!
悪魔たちに心を支配されてはいけない。

だけど・・・なぜこんなにも熱い鼓動を感じることができるんだ?


熱い鼓動がまるで、俺を呼んでいるかのような。

ああ、熱い!

そんなに呼ぶなよ。俺の思いが抑えられないだろう?


やめろって、熱いからやめろ!


やめろっていってる!

いい加減にしろ。呼ぶんじゃない・・・いちこ!!!!


いちこ!?


そうだ、いちこは焼かれていないのか?

背中を焼かれてただれて、動けなくなり、形もなくなって・・・


それはリズナータと呼ばれた俺の本性。

違う!


リズナータは本を作る悪魔で、あいつに意識をとらわれた日本人。

俺は祐希であり、退治屋で待っていた。

何を待っていたんだ?

俺は・・・宇名観という世界にやってきて何を待っていた?


いちこ?
いや、いちこが大切なものを持ってきてくれることを待っていた。

俺にとって大切な・・・記憶、心、そして魂。

今ならリズナータの目的がわかる。

リズナータは最強でない悪魔でいることがつらかったんだ。
兄である魔王や身内から力のない弟であることを疎まれていた。

悪魔としては優しすぎた・・・そんな悲しみを本にしていた。
俺はその本から気持ちを察して、本に取り込まれてしまった。


そして、今・・・リズナータは魔界ではなく、神の側に召されたようだな。
この空間にも地上にもリズナータはいない。

俺は本来の祐希にもどり、俺とリズナータにかけられていたすべての制限から解放されたんだ。


じゃ、どうして俺はこんなところにいる?
退治屋でも自宅でもないこんなところ・・・何もない空間に俺だけ?

いちこはどうした?
リズナータを切り離されたいちこはどうしているんだ?
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