メランコリィ
私の首に絡みついた彼女の腕は、人形のように白くて細かった。その気にならずともその腕から逃れることは容易い。しかし、解けば折れてしまいそうなその腕に、私の自由は簡単に奪われてしまう。

「お父様のことは大好きよ、だからこの話も受け入れたわ、わたし……」

小さな肩が震え、語尾ははっきりとは聞こえなかった。

「お嬢様、…もうそろそろ準備を、」
「ねぇ、鹿島、わたしはあなたが好きよ…」

勿論愛しているという意味で、と自嘲気味に笑う彼女の、硝子細工のような瞳に映っているのは、紛れもなく見慣れた自分の顔。どこか、物憂げに見えたのは、彼女の涙の所為で歪んで見えるためだからなのか。
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