恋愛、友情。ときどき涙。2
「音羽の気持ちはよく分かる。
だけど、多分……音羽にはどっちかなんて選べないよ」
先輩はあたしを優しく抱きしめながら、耳元でそう言う。
「選べないって……?」
「……沢木も海斗も。
どっちも大切なんだろ?」
……コクリと静かに頷く。
比べることなんてできない。
どっちがより大事か、なんて。
二人とも……あたしにとっていなくてはならない存在になってしまったから。
「……だったら、選ばなくていい。
音羽は自分のやりたいように……自分が正しいと思うことをすればいい」
「でもっ……。
……今までそうやってきて……結局人を傷つけて……」
「……大丈夫だよ」
先輩があたしの頭を優しく撫でる。
……安心する、この感じ。
少し前までは海斗がこうしてあたしを慰めてくれていたこともあった。
だけど、海斗とは……やっぱり何か違う。
もっと何か……温かい感じがする。
「……音羽が沢木のことを思って出した答えなら……いつか、それが正解になる時がくるから。
……だから、音羽はそのままでいい。
そのままの音羽が……みんな好きなんだから。
……沢木もきっとそう思ってる」
「っ……………………」
……あたしが綾乃のことを思って出した答え……
……そのままの……あたし……。