恋愛、友情。ときどき涙。2

「杉山君が心配してるのは……」

「え?」

「……音ちゃんじゃ……ないの?」


…………………。


……驚いて言葉も出なかった。


今この場にいて涙を流しているのは沢木

だから沢木の心配をしている

それは当たり前のことで。


……なのに、何でそこで音羽が出てくる?


「沢……」

「……離して……」

「おい……」

「っ……離して!」


大きな声と共に俺の手は振り払われた。


……そして、そのまま……沢木は走り去っていく。


……沢木のあんな大きな声、初めて聞いた。

あんなこと言われるなんて……思ってもみなかった。


……振り払われた右手。


そこから沢木の走り去っていった方へと視線を移す。


……そこにはもう沢木の姿はとっくになくて。


「何やってんだ、俺……」


……自分の不甲斐なさにとことん嫌気が差した。


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