恋愛、友情。ときどき涙。2

「海斗は海斗。
杉山海斗っていうそれ以外の何者でもない。
だろ?」

「あー……うん」


そういう意味じゃないんだけど……


でも、自信満々にそう言う陽太を見ていたら自然と口元が緩んだ。


俺は俺……か。


「……そうだよな」


何があろうと、俺は俺と向き合っていかなきゃいけない。

俺は俺でしかないんだから。

自分の問題は……自分の中でちゃんと解決しなくちゃ。


「杉山」


名前を呼ばれて顔を上げると、いつの間にか真横に小倉が立っていた。


「何?」

「あっちでアンタのこと呼んでるわよ」

「あっち?」


小倉に言われた方を見れば、一人の女子が教室の入り口近くに立っていた。


あの子は………


「モテモテだな、海斗」


陽太のひやかしを聞きながら重たい腰を上げる。


……すると、バシンッ!と突然背中を勢いよく叩かれた。

背中がジンジンする……。


「ってぇ……何だよ」


犯人である小倉を軽く睨めば、小倉は涼しげな顔をして特に悪びれた様子もなく口を開いた。


「もっとシャキッとしたら?」


……そんなの……

……言われなくても分かってるっつーの。


「………………………」


俺は何も答えずに、黙ったまま教室の入り口へと歩いていった。

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