傾国



礼は幼い頃から、自分の弓の腕をいつか家族のために使いたいと思っていた。




皇太子付きともなれば、給金は弓兵隊の比ではない。












皇太子付き武官になりたい、と言うと、父の箸が止まった。



夕食の席だった。


父は箸を置いて、礼を凝視した。



「急ぐことは無いんじゃないか……。お前の弓の腕前は皆知っているし、弓兵隊ももういい加減、募集がかかるだろう」



「父上、私は今年十五です。武人を目指すなら、もう修練に入る年です」



礼の意をはかるかのように、父はゆっくり尋ねた。


その問いに、礼は用意してあった言葉を並べた。



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