傾国


丹賤(たんせん)が、と吐き捨てるように罵られる母の姿を、礼も見たことがある。


礼自身も、母から受け継いだその容貌から、きつい言葉を吐かれることがあった。



姓を持つ階層であるにも関わらず、給金だけでは足りないからと、母は細々とした仕事をいくつも内職として請け負い、一家を支えている。


母に頼るばかりの自分が情けなかったのは事実だ。



自分の思いは隠そうと思っていた。


ただ純粋に、武官になる機会を逃したくないのだと、そう言うつもりだった。



くっきりと彫りの深い顔に、母は不安を滲ませていた。


箸を持ったその手が、荒れている。



それを見て、気が変わった。



「はい」



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