傾国
母の目が、辛そうに細められた。
「その気持ちは嬉しいけれど――」
「よく言いました、礼」
母の言葉を朗らかに遮ったのは、祖母だった。
「孫の口からそんな言葉を聞けて、嬉しいですよ」
そう言って、祖母は土間に降り、漬け物甕の辺りで何やらごそごそやりだした。
「お義母様、それは……!」
母が声を上げる。
やがて戻って来た祖母の腕には、漆塗りの重そうな小箱が抱えられていた。
「礼、これはお祖父様が家のためにと残して下さったものです」
そう言って祖母が開けた蓋の下には、金貨が所狭しと敷き詰められていた。