傾国
「おい葉慶ー、そろそろ師がいらっしゃるぞー」
どこからか飛んだその言葉に、礼は結局席を立つことにした。
「あの、どうぞ」
「悪いな」
荒い言葉で素っ気なく礼を言い、葉慶と呼ばれた少女はどっかりと腰を下ろした。
すれ違う時ちらりと見えた彼女の昔題集に、礼は思わず声を上げた。
「医女か」
使い込まれた風のその表紙には、医術と薬術の神の画が刷ってある。
葉慶は礼を見上げて、ひょいと眉を上げた。
「医官だ」