傾国



部屋を出ると、老いた武官たちが自分の後ろに付き従った。


民衆が自分に期待していないことは知っている。


同じように、皇城の人間も誰一人として自分に期待していない。


だから護衛が老人ばかりなのだ。



父帝が病の床について、二年が経つ。


もう子をもうけることは出来ないからと、庶出の自分が皇太子に指名された。


それまで自分は、皇帝の顔を見たことすらなかった。



戯れに寵を受けて身籠ったのは、父の二十二番目の側室の、侍女だった。


陽当たりの悪い北宮に母と二人で、しかも権力欲に取り憑かれた彼女は央宮に入り浸り、第一皇子崔延(さいえん)は忘れられたように幼少期を過ごした。



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