傾国





刺客は、布を噛ませるより早く、舌を噛み切って果てたという。


そのため、直ちに開かれた朝議では、状況の確認と警備責任の追及、首謀者の推定が主なものとなった。



「――ですがあの少年が飛びついたために刺客は手を滑らせ、つがえたままだった矢は少年に刺さった、と」



何度目かの状況説明を終えた警護長に、朝臣の一人が尋ねた。



「その、刺客を止めた少年というのは何者なのだ」



「青礼という、今日の儀式を見物に来た、貴族の息子です。若い武官の中では見事な射手だと知られておりました」



「官ではないのだろう?」



「皇立弓射場をよく利用していたとか」



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