傾国
「丹の者だというのは真か」
別の朝臣からとんだ問いに、警護長は一瞬口ごもった。
「は……母が丹の民だそうで」
朝臣たちがあからさまに興味を無くしたのを、崔延は敏感に感じ取った。
「首謀者の目星は」
崔延に最も近い所に座っていた宰相が、話の流れを変えた。
「それが……」
警護長は呟いて、懐から白い布包みを取り出した。
「刺客が持っていた巾着からこのような物が見つかりまして」
包みを渡され、崔延はそっとそれを開いた。
「旅券?」