傾国
もっと
も、人の本性などそう表に出るものではない。
あの夏伯が、という思いは、大して崔延の心を揺さぶることなく頭の奥底に沈んだ。
「これにて朝儀を閉じる」
言葉をかけると、朝臣たちは疲れたように立ち上がり辞していった。
首筋をさする年寄りじみた仕草に、嫌味な、と思ってしまう自分はひねくれているのだろうか。
「見舞いに行く」
立ち上がった崔延に、まだ傍らに残っていた宰相が訝しげに訊いた。
「どちらへ?」
「青礼の所だ。護衛はいらない、私一人で行く」
宰相が苦々しい表情になったが、崔延は無視した。
扉へ歩き出しても宰相が護衛を呼ぶ様子はない。
放っておかれているのが、今は嬉しかった。