傾国
意識が瞼の裏に浮かび上がってくると同時に、熱いと感じていた脇腹がひどく痛みだした。
「……う……」
「痛むのか?」
澄んだ若い男の声が、なめらかに耳に滑り込む。
目を明けると、黒い瞳が覗き込んできた。
「肉は傷ついているが、中の臓器には問題ないそうだ。癒えるまで、そなたはここで過ごす事になった」
その瞳に見とれた。
「そなたの家には遣いを出した。友の二人が随分と案じていたぞ。家まで送らせた」
衣の襟には、皇族のみが使用を許される月輪文が銀糸であしらわれている。
自分と歳の頃は同じ。
これほど若い皇族の男性は一人しかいない。