傾国
「これは、御無礼を……!」
自分は皇太子の顔を凝視していたのだ。
「寝ておれ、傷に障るぞ」
皇太子の手にそっと肩を押され、礼は戸惑いながらまた横になった。
「何か欲しい物があれば申せ。すぐに届けさせる」
にこやかに微笑みながら、崔延は礼の枕元に座った。
何故ここにいるのだろう。
政務は良いのだろうか。
落ち着かないでいると、崔延が口を開いた。
「気分が良ければ訊きたいのだが」
「はい」
「そなたは何故あの男を止めようと思ったのだ?」