傾国
「殿下が狙われているのではと思いました故」
「どうしてそう思った?」
「それは……殿下は皇太子でいらっしゃいます」
答えになっているかは分からなかったが、崔延はそうだな、と頷いた。
伏せられたその目が翳ったように見えて、礼は焦った。
何か言わなくては。
こんな時はつくづく口下手な自分が嫌になる。
「誰かが」
す、と崔延が顔を上げた。
勢いで口が動いてしまい、どう続けるか考え考え礼は言った。
「誰かが、命を落とすかもしれないと分かっていて、それを防ぐ事が自分にできるなら、防ぐのは当たり前かと」
目を見て言いたかった。
不敬にあたるかもしれないが、礼は真っ直ぐ目の前の瞳を見てそう言った。